DeNA Testing Blog

Make Testing Fun, Smart, and Delighting End-Users

SWETの2名が執筆に加わった「iOSテスト全書」が一般発売されました

SWETグループ、iOS自動テスト領域チームの平田(tarappo)です。

長いことおまたせしましたが、12/16(月)に「iOSテスト全書」が一般発売されました。 私と同じくSWETの細沼(tobi462)が執筆に加わっています。

f:id:swet-blog:20191216185012j:plain ※12/16(月)に開催されたiOS / Android Test Nightの開始前に写真を撮りました。

本書の一般販売を記念して、本エントリーでは本書全体の概要と見どころについて解説します。 また、併せてすでに発売済みの「iOSアプリ開発自動テストの教科書(以後、教科書本)」との想定読者の違いについても説明します。

本書の企画

本書の企画は、私が相談をして進めさせてもらいました。

昨年(2018年)「Androidテスト全書」の執筆に関わり、周りからの意見もありiOSアプリ開発においても、このようなテストについての本の必要性を強く感じていました。

iOSアプリ開発においては、テスト周りにおいて体系的にまとまった情報はあまりありません。 一歩踏み込んだ情報となると、日本語でのネット情報は少なくその情報自体最新のものなのかわからないといった状況でもありました。

「iOSテスト全書」の企画を立ち上げる前から、私と細沼は「教科書本」の執筆について話が進んでおり執筆がスタートしはじめていました。 この本はその名の通り教科書として最初の一歩として道標になると思ってはいたものの、この本だけでは不足している面もあるだろうとも思っていました。

そこで、「iOSテスト全書」としてさらに一歩の情報まで載せた本を世に出したいと思い、執筆に加わってほしい人たちに声をかけました。

Androidテスト全書が一般発売されたのは2018年11月5日になります。 そこから2週間後、11月19日が執筆者と編集者が揃った「iOSテスト全書」のキックオフの日になります。 そして2019年1月28日にクラウドファンディングがスタートし、このたび一般販売となりました。

思っていたよりも時間がかかってしまいましたが、良いものができたと思います。 ぜひ、手にとっていただければと思います。

本書の概要

本書の目次は次のとおりです。

  • 1章:テスト自動化入門
  • 2章:ユニットテスト(概要)
  • 3章:ユニットテスト(XCTest編)
  • 4章:ユニットテスト(Quick/Nimble編)
  • 5章:BDDによるアプリ開発
  • 6章:UIテスト入門
  • 7章:XCUITestを使ったUIテスト
  • 8章:サードパーティ製ツールとAppium
  • 9章:CI/CD

自動テストに対する話から、ユニットテスト・UIテスト、そしてそれらを実行するCI/CDについてまで触れています。 この中から細沼が2章〜5章(3章共著)、平田が6章と9章を担当しています。

「教科書本」はテストに関するものを幅広く扱い、その名前の通り教科書として最初に活用してもらうことを想定しています。 「iOSテスト全書」では、より一歩進んだところにもいけるよう自動テストやCI/CDについてもう少しふみこんで書いてあります。

このようなiOSアプリ開発におけるテスト周りにフォーカスした本が2019年に2冊も出たということは凄いことだと思っています。 是非ともiOSアプリ開発をおこなっている方は、本書を手にとって頂いて書いてある内容にチャレンジしてみてください。

本書の想定読者

本書の想定読者はPEAKSのページに書いてあるとおり次の方になります。

  • テストについて興味はあるがどうしたらいいかわからない方
  • テストについてもっとよい書き方があるのではないかと悩んでいる方
  • テストにもっと強くなりたい方
  • CI/CDサービスをもっと活用したいと思っている方

iOSアプリ開発に携わる人であれば、なにかしら得られるものがある内容になっています。

各章の見どころについてはそれぞれの執筆者が書いてくださると思っています。 ここでは、我々が執筆した章についての見どころについて次に説明していきたいと思います。

2章〜5章の見どころ(細沼担当)

個人ブログ記事でも書かせていただきましたが、 私が担当した2章、4章、5章はそれぞれ明確なコンセプトをもって執筆をさせていただきました。

2章は『iOSに限定されないユニットテストの知識』をテーマにして、 ユニットテストにおいて一般的に利用できるテクニックを紹介しています。

個人的な見どころは『テストコードの保守性を上げる』のトピックです。 XCTestを使った愚直なテストコードの例からはじめ、 テストコードを徐々にリファクタリングしながら保守性を上げる過程がわかるようになっています。

3章は共著として一部のみを担当しました。 具体的には『テスト実行の単位を管理する方法』として、 これまで利用されてきた『スキーム』を使った方法に加え、 Xcode 11から追加された『テストプラン』の利用方法について記載しています。

このあたりは中々分かりづらい機能ですが、 個人的にわかりやすく解説できているのではと感じます。

4章は『日本語における最強のQuick/Nimbleリソース』をテーマとして執筆しました。

Quick/Nimbleは公式でもドキュメントが整備されているOSSですが、 知識を体系的に積んで学ぶという点においては、個人的に不足を感じていました。

そこで知識を一から積んでいけるように構成を工夫し、 分かりづらい機能についても、できるだけ丁寧な解説を心がけています。

5章は『私が今まで得てきた知恵や経験を、書籍を通して読者に』をテーマにし、 Quick/NimbleとBDD(振舞駆動開発)を利用してサンプルアプリを開発する内容になっています。

2章〜4章で解説してきた静的なテクニックをつなぎ合わせ、 動的なストーリーとして理解を深められる構成になっています。 そういった意味で、2章〜4章で学んできた内容を締めくくる、ユニットテストにおけるまとめ的な章になっています。

6章、9章の見どころ(平田担当)

6章の「UIテスト入門」については、UIテストをおこなっていく上で、次のようなフェーズ単位で気にすべきことをまとめました。

  • 導入前に検討したほうがいいこと
  • 実装中に考慮すべきこと
  • 運用時に注意するべきこと

UIテストは実装して、動いているのを見ると「なんか凄い!」と実装者自身やチームメンバーが感じやすいです。 その結果、闇雲にテストコードを追加し、その結果として負債となるコードが生まれることもあります。

一旦落ち着いて何をするべきかを考えることが重要です。 そこで筆者の経験などを元に、UIテストが実際に現場で活用できるように、それぞれのフェーズで気にすべきことをある程度まとめました。

9章の「CI/CD」では、「CI/CDとはなにか」について厚めに述べています。 本来は、この話だけで1冊になってしまうぐらいの話ですが、次のようなトピックに注力し説明をしています。

  • CIとはなにか?
  • CDとはなにか?
  • どのようなワークフローを組むか

このような内容は、特定のサービスに限らず他でも汎用的に利用できるものです。

しかし、実際に利用した形も見ないとイメージが分かりづらいのも事実です。 そこで、述べたワークフローの例をもとにiOSアプリ開発で人気のCI/CDサービスであるBitriseを用いて説明をしています。

本章の内容により、自社のプロダクトにおいてどのようなワークフローを用意するのが良いかを考える一助になってくれると筆者としては嬉しい限りです。

おわりに

今回は、一般発売がはじまった「iOSテスト全書」について解説させていただきました。 この本が何かしら皆さんにとってプラスとなり、そして今後テストに関する情報がいろいろな媒体を通して世に出てもらえれば筆者としては嬉しい限りです。

また、我々SWETとしては今後「教科書本」や「iOSテスト全書」を社内で活用するよういろいろとおこなっていく予定です。 まだ何かしら具体的な活動はそこまで行えておらず、世へのアウトプット出来ていませんが、今後のアウトプットをお待ちいただければと思います。

そして、これらの活動に興味がある方はぜひとも次から書かれている内容を元に仲間となっていただけると嬉しい限りです。

仲間を募集中

SWETチームでは自動テストやCI/CDを活用する仕事に興味を持った方を募集しています。

以下のエントリフォームから応募できるほか、 私や他のSWETメンバーに声をかけて頂くかたちでも大丈夫です。

是非ともお気軽にご連絡ください!

xcode-installのリグレッションテストをGitHub Actionsで自動化した話

この記事はDeNA Advent Calendar 2019の2日目の記事です。

SWETの加瀬(@Kesin11)です。

SWETグループではいくつかの分野ごとにチームを分けて活動をしており、自分は現在CI/CDチームで主にゲーム事業部向けのJenkinsやCI/CDのサポートをしています。

今回は、xcode-installというgemにpull-reqを送る際に、動作確認のための環境としてGitHub Actionsを活用したことについての記事です。

xcode-installとは

xcode-installはその名の通り、XcodeのインストールやアンインストールをCLIから可能にするxcversionというコマンドを提供するgemです。大半の方はApp StoreやAppleのデベロッパー向けサイトからXcodeをダウンロードして手動でインストールしているでしょうから、そのようなツールがなぜ必要なのかと不思議に思われるかもしれません。

iOS開発におけるCI/CDには、CircleCIやBitriseといったマネージドサービスを利用することが一般的になってきました。ですが、ビルド時間やリポジトリ容量などの問題からそのようなサービスを使いにくいプロダクトも存在します。その場合は、Jenkins + ビルド用macOSの両方を自前で構築、管理することになります。

このビルド用macOSのマシンには、iOSアプリをビルドするための様々なツールを予めセットアップしておく必要があり、Xcodeもその1つです。マシンが1台だけであれば手動で全てのツールをセットアップ可能ですが、ビルドマシン増設を容易にするためSWETではAnsibleを採用してビルドマシンの各種ツールのセットアップを自動化しています。

Ansibleでツールをインストールする際には、homebrewのようなCLIツールが提供されていると簡単です。そこで、Xcodeをインストールするにはxcode-installが必要不可欠となります。

ここからが本題となるのですが、Xcode 11がリリースされてほどなくした今年の10月末にxcode-installで前バージョンであるXcode 10.3をインストールしようとしたところ、なぜか失敗するようになっていました。xcode-installが使えなくなるのは自分たちの業務に大変影響があるため、原因を調査して修正することにしました。

Xcode 10.x系がインストールできない問題(修正済み)

今回、自分が遭遇した問題はXcode 10系でインストールに失敗するというものでした(issue)。ちょうどXcode 11系の正式版がリリースされた時期で、Xcode 11系のインストールは問題がなかったためか、自分以外にissueで報告している人もいないようでした。

ソースコードや過去のpull-reqを追ったところ、ダウンロードしたxipを解凍後のXcode.appの証明書検証に失敗していることが分かりましたので、手元でインストールしたgemに対して後にpull-reqを出したパッチを当てて、Xcode 10.3のインストールが成功するように修正をしました。

xcode-installを修正する難しさ

自分は数年前からxcode-installを使用していますが、過去にも度々動作が不安定になったり、特定の人の環境では失敗するという話を社内で聞くことがありました。不安定な要因として、xcode-installに関係する環境の複雑さがあります

  • macOSのバージョン
  • Rubyのバージョン
  • Fastlaneのバージョン1
  • インストールしようとしているXcodeのバージョン

xcode-installの過去のissuepull-reqを見てもらうと分かるのですが、自分の環境では動いた/動かなかった、という報告が多いです。

今回の自分の修正パッチも、自分の手元のmacではXcode 10.3がインストールできることは確認したものの、 Xcode 10.0 ~ 11.1の間に含まれる他のバージョンで逆にインストールが失敗してしまうのではないか不安がありました。

本来であれば全てのバージョンで動作確認をするべきなのですが、Xcodeのインストールは自分の環境で1回あたり30-40分程度の時間がかかることと、xipをダウンロード後の解凍や検証の処理でCPUパワーが使われるためになかなか辛いものがありました。

GitHub Actionsを利用したリグレッションテスト

手元のmacで実行するのが難しいのであれば、外部のマシンパワーをお借りしたいところです。ちょうどGitHub Actionsがオープンβで個人的にも色々試していた時期で、macOSのVMも使えることが分かっていました。このmacOSのVMを利用してxcode-installの過去のXcodeバージョンのインストール動作確認、すなわちリグレッションテスト(回帰テスト)を行うことを思いつきました。

自分が修正パッチを当てる前は、10系のXcodeのインストールが失敗するという状態でしたので、実際に全てのXcodeのバージョンについて問題なくインストールできることを確認することにしました。確認の手順としては以下になります。

  1. xcversion install {XCODE_VERSION} が終了コード0で完了すること
  2. xcversion installed の結果にインストールしたXcodeのバージョンが表示されること

実際にGitHub Actionsのyamlに書き下したのがこちらです

name: "E2E test"
on: [pull_request]

jobs:
check_install:
  strategy:
    fail-fast: false
    matrix:
      os: [macos-latest]
      xcode: ["10.0", "10.1", "10.2.1", "10.3", "11.0", "11.1", "11.2.1"]

  runs-on: ${{ matrix.os }}
  env:
    # It needs AppleID that has disabled 2FA.
    XCODE_INSTALL_USER: ${{ secrets.XCODE_INSTALL_USER }}
    XCODE_INSTALL_PASSWORD: ${{ secrets.XCODE_INSTALL_PASSWORD }}
  steps:
  # Prepare env
  - uses: actions/checkout@master
  - uses: actions/setup-ruby@master
    with:
      ruby-version: '2.6'

  # Show env
  - name: Show macOS version
    run: sw_vers
  - name: Show ruby version
    run: |
      ruby --version
      bundler --version
  
  # Prepare
  - run: bundle install -j4 --clean --path=vendor
  - run: bundle exec xcversion update
  - name: Show installed versions before install
    run: bundle exec xcversion installed
  - name: Uninstall installed target Xcode version
    run: bundle exec xcversion uninstall ${{ matrix.xcode }} || true

  # Exec
  - run: bundle exec xcversion install ${{ matrix.xcode }}

  # Check
  - name: Show installed versions after install
    run: bundle exec xcversion installed
  - name: Check Xcode installation was successful
    run: bundle exec xcversion installed | grep "${{ matrix.xcode }}"

xcode-installをforkした自分のリポジトリでこのGitHub Actionsを動かし、全てのバージョンで問題なくインストールできることを確認できましたので、自信を持って本家にpull-reqを送ることができました。

GitHub Actionsは他のCIサービス同様に、publicなリポジトリであればオーナー以外のユーザーも実行ログを確認できます。自分は今回pull-reqを出した側でしたが、レビュワーも実際に動いたログからデグレしていないことを確認できたため、安心できたのではないでしょうか。

その後、自分が作成したGitHub Actionsのコードはメンテナの方に興味を持ってもらえたようで、別のpull-reqで本家にマージされました🎉
xcode-installの動作確認が簡単になることで他の方もコントリビュートしやすくなり、今後は安定性も向上するでしょう。

まとめ

今回はxcode-installという特殊なツールの修正事例を通してGitHub Actionsの少し変わった活用方法をご紹介しました。GitHub Actionsでは他のCIサービスと同様にLint、ユニットテスト、デプロイというフローを組み立てるのが一般的だと思いますが、応用次第で今回のように色々と面白いことができるはずです。

最後に、CI/CDチームでは社内におけるCI/CD環境の開発・提供を通じて、開発者が開発に専念できるプロセスを支援しています。
興味を持たれた方は下記の職種で採用をしておりますので、ぜひご応募ください。


  1. Developer Portalにアクセスする処理などにFastlane内部のライブラリが使用されていたりします。ですが、xcode-installのgemspecでFastlaneのバージョンは厳格に管理されていないため、環境によってはとても古いFastlaneが使われてしまうことで問題となることがあります

MOV Android版に対する「コード改善+テスト導入」の取り組みの紹介

こんにちは。SWETの瀬戸(@seto_hi)です。

2019年7月下旬からSWETにジョインし、テストが書きにくい設計を改善して自動テストの導入をサポートする取り組みを行っています。 その取り組みの一環として、MOV Androidアプリの設計の改善を進めてきました。

本記事では、2か月間の中で改善した4つの事例について紹介したいと思います。

MOVのAndroidアプリについて

DeNAでは MOV というタクシーの配車サービスを運営しています。
今回リファクタリングを行ったのは、アプリのユーザーが配車依頼から支払いまでを行う、アプリの中心となる画面です。

画面構成

画面の構造は下記のようになっています。

f:id:swet-blog:20190924175038p:plain

常時表示されるActivityと地図Fragmentはシンプルですが、OverlayFragmentの構造がとても複雑な作りとなっています。 OverlayFragmentは20種類以上の状態があり、その状態に従って10種類以上のFragmentが差し替わるようになっています。
それだけでなく、OverlayFragmentの変更を受けてActivityと地図Fragmentの状態も変更されるので、状態の伝搬や管理が複雑になっています。

実装上の問題点と解決策

画面構成の複雑さだけでなく、MOVのユーザーアプリには様々な歴史的経緯があり内部実装は更に複雑になっていました。 特に、ActivityとFragmentは見事なFatActivityとFatFragmentとして育っており、修正コストの増加やテストコードの書きづらさといった課題につながっていました。

原因を分解し、それぞれについて解決策を考えました。

課題1:BaseFragmentと多数のopenメソッド

BaseFragmentに空実装のopenメソッドが大量に定義され、各Fragmentはそのメソッドを必要に応じてoverrideしており見通しが悪くなっていました。
多くのメソッドはイベントをトリガーとして呼ばれるものだったため、ViewModelにイベント用のLiveDataを用意し、各FragmentでobserveすることによりBaseFragmentへの依存を減らしました。

課題2:Activity、地図Fragment、OverlayFragment間の不必要な依存

地図の操作イベントはCallback経由で一旦Activityに集約され、再度地図FragmentやOverlayFragmentに分配されていました。
Activityに処理を集約する必要は全くなかったので、ViewModelのLiveData経由で地図Fragmentに処理をさせるように変更しました。
OverlayFragmentの画面遷移を知らせるイベントもCallback経由で行っていたのですが、NavController.OnDestinationChangedListenerを使い、依存と実装量を減らすことができました。

これらの修正によってActivityがFragmentのインスタンスを持つ必要がなくなり、今後不必要な依存を作ってしまう可能性が減りました。

課題3:APIコールとCallbacksの実装がActivity/Fragmentにべた書きされている

APIコールとCallbacksの実装がActivity/Fragmentに書かれていたため、Activity/Fragmentの行数が増えるだけでなく、Callback内の処理のテストを書くことが難しくなっていました。

これを解消するため、Googleの提唱する Recommended app architecture に従い、設計を変更しました。
ViewModelでAPIコールをし、Coroutine化したことでcallbackも少ない行数で実装ができています。

f:id:swet-blog:20190924164641p:plain

ActivityやFragmentが状態を持っていた設計をRecommended app architectureに適合するにあたり、今回は3段階のステップを踏みました。

  1. Repositoryを作成することでViewModelへの移植をしやすくする
  2. Coroutine化でCallback処理の整理をする
  3. 状態をLiveData化し、ViewModelへ移植する

依存を減らしつつ移植することにより、安全な設計変更を行うことができました。

改善後のプロダクトコードとテストコードは以下のようになりました。

サンプルコード

CarRequestRepositoryにはCarRequestを返すgetCarRequest()というメソッドがあります。
(ここでは簡易的な例として、localにデータをキャッシュしないものとします)

class CarRequestRepository(
  private val remoteSource: CarRequestRemoteDataSource
) {
  suspend fun getCarRequest(): CarRequest = 
      remoteSource.getCarRequest()
}

ViewModelではこれを読み込み、LiveDataに保存します。 必要であればActivityやFragmentでLiveDataをObserveして値を使うことができます。

class CarRequestViewModel(
  private val repository: CarRequestRespository
): ViewModel {

  private val _carRequest = MutableLiveData<CarRequest>()
  val carRequest: LiveData<CarRequest> = _carRequest
  
  fun loadCarRequest() {
    viewModelScope.launch {
      _carRequest.value = repository.getCarRequest()
    }
  }
}

テスト

このような設計だとテストも書きやすくなります。
CarRequestViewModelのコンストラクタ引数としてCarRequestRespositoryを渡しているため(コンストラクタインジェクション)、モックオブジェクトに差し替えることが容易になります。

CarRequestViewModel#loadCarRequest呼んだ際、取得結果をobserverで検知できることを確認するテストは以下のようになります。

class CarRequestViewModelTest {
  
  @Test
  fun testLoadCarRequest_success() {
    val mockRepository = mockk<CarRequestRepository>()
    val target = CarRequestViewModel(mockRepository)
    val result = CarRequest()

    // coEveryはsuspend fun向けのevery
    // mockRepository.getCarRequest()が呼ばれたらresultを返すように設定する
    coEvery { mockRepository.getCarRequest() } returns result

    // ViewModelのcarRequestが変更されたことを確認したいのでobserverをmockする
    val mockObserver = spyk<Observer<CarRequest>>()
    target.carRequest.observeForever(mockObserver)
    // テスト対象のメソッドの呼び出し
    target.loadCarRequest()

    // mockObserverがmockRepository.getCarRequest()の結果で呼ばれたことを確認する
    verify(exactly = 1) {
      mockObserver.onChanged(result)
    }
  }
}

課題4:DialogやDrawerMenuのCallback実装もActivity/Fragmentで行っている

こちらも課題3と同様にCallbacksの実装がActivity/Fragmentに書かれていたため、Activity/Fragmentの行数が増えるだけでなく、Callback内の処理のテストを書くことが難しくなっていました。

こちらはEnumを利用することで課題を解決しています。

サンプルコード

まず、メニューの各項目をEnumとして定義します。
MOVのアプリではメニューの選択時に新しいActivityを開くようになっているため、Intentの生成メソッドも定義しました。

enum class DrawerMenuItem(
  @IdRes private val menuId: Int
) {
  ACCOUNT(R.id.menu_account) {
    override fun createIntent(context: Context): Intent =
        AccountActivity.createIntent(context)
    },
...

  abstract fun createIntent(context: Context): Intent
}

取り回しを便利にするため、idを元にEnumの要素を取得できるメソッドを定義します。

  companion object {
    fun valueOf(@IdRes id: Int): DrawerMenuItem =
        values().firstOrNull { it.menuId == id }
            ?: throw IllegalArgumentException()
  }

こういった実装をすることにより、Activity側では以下のように記述するだけで各メニューの選択時の処理ができるようになります。
将来的にメニュー項目が増えても、Activity側に修正を入れる必要はありません。

  navigation.setNavigationItemSelectedListener { menuItem ->
    val intent = DrawerMenuItem.valueOf(menuItem.itemId)
           .createIntent(this)
    startActivity(intent)
    false
  }

ちなみに、このようにEnumを使った手法はActionMenuやActivityResultにも応用できます。

テスト

enum化することによりテストも書きやすくなります。
DrawerMenuItem.ACCOUNT.createIntent のテストは以下のようになります。

  @Test
  fun createIntent_account() {
    val intent = DrawerMenuItem.ACCOUNT.createIntent(context)

    assert(intent.component).isNotNull()
    assert(intent.component!!.className).isEqualTo(AccountActivity::class.java.name)
  }

最後に

上記のような修正によって、アプリの設計は改善の方向に進み、テストコードも書きやすい状態に変化していきました。 このようなアプリの設計改善に限らず、SWETチームでは引き続き自動テストを導入するための取り組みを進めていきます。

このような取り組みに興味を持たれた方は、下記URLからのご連絡をお待ちしております!

募集職種: SWET (Software Engineer in Test) / テスト自動化エンジニア(Android Test)

Xcode 11でのテスト周りの新機能を紹介します!

SWETグループ、iOS自動テスト領域チームの細沼(tobi462)です。

今回はWWDC19で発表された内容の中から、 Xcode 11におけるテストまわりの新機能について紹介します!

新しく追加された機能は大きく以下の3つです。

  • Test Plans(テストプラン)
    • テスト実行の設定(実行対象、言語・ロケール、他)を管理できる仕組み
  • Result Bundle
    • テストの成果物(ビルドログ、テストレポート、他)をまとめる仕組み
  • XCTest - XCTUnwrap()
    • XCTAssertNotNil + guard letに相当する関数

なお、メトリクスまわりも大きく進化していますが、本記事では割愛します。

関連するWWDC19のセッション

それぞれの機能について解説する前に、 関連するWWDC19のセッションを紹介したいと思います。 本記事で解説する自動テストに関するセッションに加え、 デバッグやメトリクスが解説されているセッションもあわせて紹介します。

なお、現在では日本語字幕にも対応しています。 どれも素晴らしいセッションとなっているので、 まだ見られていない方は是非ご覧ください。

Testing in Xcode(#413)

今回のWWDC19において、自動テストをテーマとした最も大きなセッションです。

セッションは自動テストのバランスを考える上で大切な「テストピラミッド」の紹介から始まり、 XCTestやカバレッジなどの基本的な利用方法についての説明を経て、 新機能である「Test Plans」や「Result Bundles」の解説がされます。

またセッションの最後では、 自分でCI環境を構築する方法についても解説され、 とても盛り沢山なセッションとなっています。

セッション中のデモがとても分かりやすく、 テストをまだ書いたことがない人にも是非見ていただきたい内容です。

Debugging in Xcode 11(#412)

Xcode 11で追加されたデバッグまわりの機能について、解説されたセッションです。

SwiftUIまわりのデバッグ機能についての紹介が中心となっていますが、 通信環境や端末温度といったデバイス状態について、 上書きしてエミュレートする機能なども紹介されています。

デバッグは自動テストと直接関係するわけではありませんが、 アプリを効率的に開発すするための必須テクニックとして、 iOSアプリ開発者であれば是非とも抑えておきたい機能です。

What's New in Xcode 11(#401)

Xcode 11の新機能について、解説されたセッションです。

自動テストとは直接関係ないセッションですが、 「Test Plan」や「デバイス状態の上書き」といったデバッグ機能について紹介されています。 Testing in Xcode(#413)Debugging in Xcode 11(#412) といったセッションとあわせて見るとより理解が深められる内容かと思います。

Xcode 11では「エディタ分割の強化」や 「Swift Package Managerのサポート」など、 テスト以外についても多くの機能が追加されています。

iOSアプリ開発者であれば必見のセッションといえます。

Improving Battery Life and Performance(#417)

アプリのメトリクス取得について解説されたセッションです。

メトリクス取得についての基本的な考え方から、 XCTestに追加されたAPI、 新しく追加されたMetricKitなどについて解説されています。

冒頭で記載したように、 本記事ではメトリクス取得については触れませんが、 興味のある方は是非このセッションをご覧ください。

Xcode 11におけるテスト周りの新機能

それではXcode 11で追加されたテスト周りの新機能について、次の順で解説していきたいと思います。

  • Test Plans(テストプラン)
  • Result Bundle
  • XCTest - XCTUnwrap()

Test Plans(テストプラン)

Test Plansはその名のとおり、 テスト実行における計画(テスト対象、コンフィギュレーション)を管理できる機能となっています。 WWDC19のセッションでは具体的な利用例として、 多言語(日本語、英語、など)のテストなどが紹介されていました。

従来はスキームを利用して実現していたものですが、 スキーム設定ではビルドの管理といった別の用途に利用されるため、 こうしたテスト実行の管理をするための仕組みとしては煩雑でした。

今回それらが「Test Plans」という形でスキームから独立し、 テスト実行の設定を直感的に分かりやすく管理できるようになりました。

まさに、「Test Plans(テスト計画)」という名に恥じない機能となっています。

Test Plansを導入する

既存プロジェクトにTest Plans導入するには、 既存のスキーム設定から変換する方法が簡単です。

変換はスキーム設定>Test>Infoタブにある「Convert to use Test Plans...」ボタンから行います。

ダイアログが表示されるので、スキーム設定から変換する場合は一番上を選択します。

任意のファイル名(今回は AllLanguage.xctestplan)で保存すると、Test Planに切り替わります。

Test Plansの設定

プロジェクトナビゲータに追加された.xctestplanを選択すると、 「Tests」と「Configurations」タブから構成される設定画面が表示されます。

「Tests」タブはスキーム設定画面におけるテスト一覧と同じような見た目をしており、 同様に「実行するテスト対象」を選択する画面となっています。

「Configurations」タブは、 テスト実行時における設定(以降「コンフィギュレーション」と表記)を設定する画面となっており、 前述した言語設定(日本語、英語など)にくわえカバレッジ取得の有無なども設定可能です。

コンフィギュレーションは1つの.xctestplanで複数持てるようになっており、 左側のサイドバーにその一覧が表示されるようになっています。

「Shared Settings」と表示されているのは共通設定、 その下に表示されたものが個別のコンフィギュレーション(スクリーンショット中では「Configuration 1」)となっており、 個別のコンフィギュレーションは「Shared Settings」の設定値を継承する仕組みとなっています。

複数の設定を用意して実行する

例として「日本語」と「英語」の2つのコンフィギュレーションを用意してテスト実行する例を紹介します。

まず左下の「+」ボタンから「Japanese」と「English」というコンフィギュレーションを作成します。 そして、それぞれの「Application Language」の項目を「Japanese」と「English」に設定します。

ここまで設定しておくと、 テストナビゲータのコンテキストメニューから実行するコンフィギュレーションを選べるようになります。 ここでは「All Configurations」を選択して、 すべてのコンフィギュレーションでテストを実行してみます。

レポートナビゲータでテストの実行結果を確認すると、 「Japanese」と「English」の2つのコンフィギュレーションで実行されていることが分かります。

当然ながら各コンフィギュレーションごとにテスト結果がわかるようになっており、 以下のアイコンからコンフィギュレーションで絞り込むことも出来ます。

コマンドラインから利用する

xcodebuildコマンドにもTest Plans用のオプションが追加されたので、ここで紹介したいと思います。

プロジェクトに用意されたTest Plansの一覧を表示するには-showTestPlansオプションが利用できます。

$ xcodebuild \
    -project ./TestPlanSample.xcodeproj \
    -scheme 'TestPlanSample' -showTestPlans

### 出力内容:
Test plans associated with the scheme "TestPlanSample":
        AllLanguage
        UITestJapanese

テスト実行時に利用するTest Plansを指定する場合は-testPlanを利用します。

$ xcodebuild test \
    -project ./TestPlanSample.xcodeproj \
    -scheme 'TestPlanSample' \
    -destination 'platform=iOS Simulator,name=iPhone Xs' \
#    -testPlan 'AllLanguage' # テストプラン「AllLanguage」を実行

なお、-testPlanを指定しないで実行した場合はスキーム設定でデフォルトになっているものが利用されます。

ちなみにデフォルトではすべてのコンフィギュレーションが実行対象となりますが、 次のオプションを利用することで限定することもできます。

  • -only-test-configuration:指定したものだけを実行
  • -skip-test-configuration:指定したものを除外して実行
$ xcodebuild test \
...
    -testPlan 'AllLanguage' \
#    -only-test-configuration 'English' # コンフィギュレーション「English」のみを実行

Result Bundles

Result Bundles(.xcresult)は、 今まで独立していた以下のようなテスト結果を1つにパッケージするものです。

  • ビルドログ
  • テストレポート
  • コードカバレッジ
  • テスト添付ファイルなど

またxcresulttoolというコマンドも追加され、 コマンドラインからも.xcresultファイルから情報を取得でき、 JSONスキーマで仕様が明確化されたJSONでの取得も可能になっています。

こうした変更により、テスト結果リソースの扱いがシンプルに行えるようになりました。

どのように変化したか?

Xcode 10.2までは以下のスクリーンショットのように、 それぞれの結果リソースが独立したファイルとして出力されていました。

それがXcode 11からは以下のキャプチャのように、 1つの.xcresultファイルとして集約されるようになりました。

単に集約されただけではなくデータサイズについても考慮されており、 WWDC19のセションの発表によると、 これまでに比べて「最大で4倍小さいサイズ」のフォーマットとなっているようです。

この.xcresultファイルはXcodeで開いて確認できるのに加え、 前述したようにxcresulttoolという専用のコマンドを利用して、 中身の情報を取得できるようになっています。

コマンドラインで出力先を指定する

xcodebuildコマンドで-resultBundlePathオプションを利用すると、 指定したパスに.xcresultファイルを出力することが出来ます。

$ xcodebuild test -project UnitTest.xcodeproj \
    -scheme UnitTest \
    -destination 'platform=iOS Simulator,name=iPhone Xs' \
    -resultBundlePath test_output/ResultBundle.xcresult

なお、このオプションを指定しなかった場合、 プロジェクトで設定されたDerivedDataフォルダ以下に出力されます。

DerivedData/{schemeName}/Logs/Test/Test-{schemeName}-{buildNo}.xcresult

Xcodeで開いて中身を確認する

Finderからダブルクリックするか、 「Xcodeメニュー>File>Open」から.xcresultファイルを選択して開くことが出来ます。

すると以下のキャプチャのように、テスト結果をXcode上から閲覧できます。

xcresulttoolの使い方

前述したようにxcresulttoolを利用すると、中身のデータを取得することが出来ます。

以下は、JSONフォーマットとして情報を取得する例です。

$ xcrun xcresulttool get \
  --path ResultBundle.xcresult \
  --format json

出力されるJSONを抜粋すると以下のようになっています。

  "issues" : {
    "_type" : {
      "_name" : "ResultIssueSummaries"
    },
    "testFailureSummaries" : {
      "_type" : {
        "_name" : "Array"
      },
      "_values" : [
        {
          "_type" : {
            "_name" : "TestFailureIssueSummary",
            "_supertype" : {
              "_name" : "IssueSummary"
            }
          },
...
          "issueType" : {
            "_type" : {
              "_name" : "String"
            },
            "_value" : "Uncategorized"
          },
          "message" : {
            "_type" : {
              "_name" : "String"
            },
            "_value" : "XCTAssertTrue failed - \"hello\" is not empty"
          },
          "producingTarget" : {
            "_type" : {
              "_name" : "String"
            },
            "_value" : "UnitTestTests"
          },
          "testCaseName" : {
            "_type" : {
              "_name" : "String"
            },
            "_value" : "OriginalAssertionGoodTests.testAssertEmpty()"
          }
...

各項目ついての説明は割愛しますが、 かなり詳細にデータを取得できるのが分かります。

なお、JSONスキーマの取得は以下のコマンドで行えます。

$ xcrun xcresulttool formatDescription get

同様に出力結果を抜粋すると以下のようになります。

Name: Xcode Result Types
Version: 3.21
Signature: PVlziQ9KewI=
Types:
  - ActionAbstractTestSummary
    * Kind: object
    * Properties:
      + name: String?
  - ActionDeviceRecord
    * Kind: object
    * Properties:
      + name: String
      + isConcreteDevice: Bool
      + operatingSystemVersion: String
      + operatingSystemVersionWithBuildNumber: String
      + nativeArchitecture: String
      + modelName: String
      + modelCode: String
...

その他コマンドの詳細についてはman xcresulttoolから確認できます。

コードカバレッジ結果の取得

以前からxccovコマンドによってカバレッジレポートの中身を参照できました。 ある意味当然といえますが、 今回から.xcresultファイル形式もサポートされました。

.xcresultファイルからカバレッジ確認する際は、以下のコマンドで行えます。

$ xcrun xccov view --report ResultBundle.xcresult

参考まで出力結果の画面キャプチャを貼っておきます。

XCTest - XCTUnwrap()

本記事の最後として、 XCTestに追加されたXCTUnwrap()というAPIについて解説します。

XCTUnwrap()は、 オプショナル型に対してXCTAssertNotNilのアサーションと、 アンラップ処理を同時に行うAPIです。

具体的なコード例を挙げると、 これまでは以下のようなコードを書く必要がありました。

func testExample() {
    
    let string: String? = "Hello"
    
    // `nil`でないことを検証+アンラップ
    guard let s = string else { XCTAssertNotNil(string); return }
    
    // 検証
    XCTAssertEqual(s, "Hello")
}

それがXCTUnwrap()を利用すると以下のように書けるようになります。

func testExample() throws { // `throws`キーワードが必要な点に注意
    
    let string: String? = "Hello"
    
    // `nil`でないことを検証+アンラップ
    let s = try XCTUnwrap(string)
    
    // 検証
    XCTAssertEqual(s, "Hello")
}

なお、guard letではなく強制アンラップ(!)を利用すれば、 XCTUnwrap()を利用せずともシンプルに書けるのではないか、 と感じた方もいるかもしれません。

強制アンラップは記述こそ簡単ですが、 アンラップの失敗によりテストケースが失敗した場合、 「どの箇所で失敗したのか」という情報が失われ原因調査にコストがかかるという欠点があります。

なので、オプショナル型の中身を取り出して検証したい場合は、 今回追加されたXCTUnwrap()を利用していくとよいでしょう。

なお、T型とOptional<T>型はXCTAssertEqual()などの関数で比較可能なので、 中身を取り出す必要がない場合には以下のように記述できます。

let string: String? = nil
XCTAssertEqual(string, "Hello")

おわりに

本記事では、 WWDC19で発表されたXcode 11における自動テスト周りの変更点として、 「Test Plans」「Result Bundle」「XCTUnwrap()」について紹介しました。

今年のWWDC19では「SwiftUI」や「Catalyst」が大きく注目を集めていましたが、 開発における基盤を支える機能もしっかり進化していたことが分かります。 特に本記事で取り上げたような自動テスト周りの機能は、 ここ数年でかなり成熟してきたようにも感じます。

本記事で主要な機能については解説しましたが、 より詳細なテクニック・組み合わせ方法については、 まだ十分にナレッジを得られていない部分もあると感じています。

より多くの方がiOSアプリ開発コミュニティに対して、 様々な知見を公開してくださると嬉しい限りです。

仲間を募集中

お約束ではありますが、 SWETチームでは自動テストやCI/CDを活用する仕事に興味を持った方を募集しています。

以下のエントリフォームから応募できるほか、 私や他のSWETメンバーに声をかけて頂くかたちでも大丈夫です。

是非ともお気軽にご連絡ください!

Unite Tokyo 2019でゲーム開発におけるユニットテストについて発表しました #UniteTokyo

SWETグループの長谷川(@nowsprinting)です。

国内最大のUnityイベントであるUnite Tokyo 2019にて『Unity Test Runnerを活用して内部品質を向上しよう』と題して、Unityでのゲーム開発におけるユニットテストについての発表を行ないました。

f:id:swet-blog:20191001141623j:plain

スライドはUnity Learning Materialsで公開されています。動画も近日中に公開予定です。

learning.unity3d.jp

セッションについて

Uniteでテストを扱うセッションは稀で、どのくらい来ていただけるか不安でしたが、400人部屋の8割ほどが埋まっていたように見えました。 聴講に来ていただいた方々、ありがとうございました。

Unity開発者の皆さんのテストに対する関心の高さを実感でき、今後とも社内外に向けてテストに関する情報発信をしていくモチベーションとさせていただきます。

またセッション後の質疑応答も、10名ほどの方々と都合30分ほどお話させていただきました。 疑問に回答させていただくだけでなく、皆さんそれぞれのテスト観や現場で困っていることなど私のほうでも多くの知見を得ることができ、大変有意義な時間となりました。

技術的トピックについての補足および、セッション後の質疑応答の内容については下記個人ブログに書いていますので、ぜひ併せてご覧ください。

www.nowsprinting.com

"テストを書く文化を根付かせる"試みについて

セッションの終盤に「"テストを書く文化を根付かせる"1試み」と題して、DeNA社内のUnityプロジェクトにユニットテストを導入していった経緯をお話しました。

SWETグループは、いわゆるQAとは別のアプローチで品質向上を目指す横断的組織であり、各ゲームタイトルの開発チームをサポートする立場です。 ユニットテストに関しては、まずは開発チームに現状をヒアリングしつつ「ゲーム開発でテストを書く意味・価値」を考え直すところからスタートし、ようやく一歩目を踏み出せた段階です。

私たちの事例は、セッション中にお話したように「タイミングがよかった」に尽きます。 しかしこの事例・アプローチを弊社だけの特殊事例では終わらせず、業界全体によりよい文化が広がるよう、今後とも社内外への普及活動・情報発信を続けていくつもりです。

以上のような試みに共感していただけた方、興味を持たれた方、一緒に働いてみようと思ってくれた方。 下記職種で採用しておりますので、ぜひご応募ください。お待ちしております。

テスト自動化エンジニア(Unity Test)

テストエンジニア (ゲームアーキテクチャ)

また、その他の分野へのご応募もお待ちしております。 募集職種に関してましては、本ブログサイドバーの「採用情報」の項目をご覧ください。


  1. これはセッション冒頭で紹介した、CEDEC 2019における@t_wada氏のセッションタイトルの引用です。資料はCEDiLからダウンロード可能です

テスト社内普及プロジェクト第2弾! Android UIテストハンズオンを実施しました

こんにちは。SWETグループの外山(@sumio_tym)です。

先日、社内のAndroidエンジニア向けにUIテストのハンズオンを開催しました。 本記事では、ハンズオンを開催するに至った経緯と、その内容を紹介します。

UIテストハンズオン開催の経緯

SWETでは、社内のエンジニアに自動テストのナレッジを普及させるための取り組みを継続しています。 2019年4月に開催したAndroidユニットテストのハンズオンもその一環でした。

当時のAndroidユニットテストのハンズオン参加者を対象としたアンケートで「次に開催してほしいハンズオン」について尋ねていました。 その結果、90%以上の参加者がUIテストハンズオンの開催を希望していたため、Android UIテスト1のハンズオンを開催することにしました。

ところで、Androidの公式ドキュメントで紹介されているテストピラミッドによると、UIテストの推奨割合はテスト全体の10%程度とされています。 本記事の読者の中には、10%のUIテストのためにハンズオンを開催する価値があるのか疑問に思う方もいらっしゃるかも知れません。

しかし私達は、エンジニアが自動テストを活用できるようになるには、 UIテストの特徴や使い方の理解は避けて通れないと考えています。 それらが理解できてはじめて、テストをどのアプローチで自動化するか判断できるようになるからです。

  • テストしようとしている内容はユニットテストとして実装できないか?
  • ユニットテストとして実装できない場合、自動化されたUIテストとして実装すべきか? 手動でテストした方が良いのではないか?

このような判断ができるようになることも念頭に置いて、UIテストハンズオンのカリキュラムを検討しました。

UIテストハンズオンの構成

昨年出版された「Androidテスト全書」は、 Android UIテストハンズオンの用途にはぴったりです。 とはいえ、出版されてからの1年間でAndroidのテストを取り巻く状況も変化してきています。

そこで今回のハンズオンでは「Androidテスト全書」をベースにしつつ、 Androidのテストを取り巻く最新トレンドを踏まえて、次の内容も盛り込むことにしました。

  • AndroidX Testに新しく導入されたActivityScenarioFragmentScenarioの使い方
  • Kotlinコルーチンによる非同期処理に対応する方法

私達SWETはテストの専門家集団として、 Androidテスト全書のUIテスト部分を執筆し、 それ以降もAndroid UIテストのナレッジを常にアップデートしてきました。 そのため、より現在のAndroid開発に適したものとなるよう、柔軟にカリキュラムをアレンジできました。

なお「Androidテスト全書」のUIテスト部分は4章から6章で構成されていますが、今回は次のような理由により4・5章のみをベースにしています。

  • ユニットテスト・UIテストのどちらで実装するかを含めた判断をするためには、UIテストの特徴や導入前の検討事項がまとまっている4章「UIテスト(概要編)」の理解が不可欠である
  • Androidエンジニアがテストを書くケースを考えると、Appium(6章)よりもEspresso(5章)の方が取り組みやすい

これらの内容を「基礎編」と「応用編」に分け、それぞれ2時間(合計4時間)で実施することにしました。

「基礎編」のカリキュラム

基礎編のカリキュラムは次の通りで、外山と田熊(@fgfgtkm)が作成しました。 前半の1時間が座学で、後半の1時間がハンズオンです。座学はほぼAndroidテスト全書の4章に沿った内容です。

セクション 参考にした資料
座学:UIテストの自動化を始める前に Androidテスト全書4.1章
座学:テストツール選択のポイント Androidテスト全書4.2章
座学:長くテストツールを利用し続けるには Androidテスト全書4.3章
ハンズオン:Page Objectデザインパターンを使ってテストを書いてみよう 外山のDroidKaigi 2019発表

基礎編では思い切って、EspressoのAPI説明を全て割愛することにしました。 UIテストを作るだけであれば、Android StudioのEspresso Test Recorderを使えば簡単に実現できるからです。

その点を踏まえると、Androidエンジニアにとっての「UIテストを書くための基礎」 としてより優先度が高いのは「EspressoのAPIを理解してテストを書けること」ではなく 「Page Objectデザインパターンを適用できること」であると考えました。

その考えを元に、ハンズオン部分はEspressoのAPIを知らなくても進められるような構成にしています。

  • Espresso Test Recorderでテストシナリオを記録する
  • 生成されたテストコードをActivityScenarioを使うように書き換える
  • Android Studioのリファクタ機能を使って、安全にPage Object化する

この構成にすることで、2時間という短時間で、 UIテスト未経験のAndroidエンジニアでも保守性の高いUIテストの書き方を習得できる内容になりました。

また、ハンズオン部分はスライドではなくGoogle Codelab形式で作成しました。

f:id:swet-blog:20190927124405p:plain
Google Codelab形式で作成した研修コンテンツのスクリーンショット

Google Codelab形式で作成することにより、今回参加できなかった方も独学でハンズオンを進められるようにしました。

「応用編」のカリキュラム

応用編のカリキュラムは次の通りで、田熊と鈴木穂高(@hoddy3190)が作成しました。 こちらは全てGoogle Codelab形式で作成しました。

セクション 参考にした資料
座学:ActivityScenarioFragmentScenarioを使ったActivity/Fragmentの起動 公式ドキュメント
Test your app's activities
Test your app's fragments
座学&ハンズオン:Espresso APIの基本 Androidテスト全書5.4章
座学:RecyclerViewを操作する Androidテスト全書5.7.1章
座学:カスタムViewActionの作成 Androidテスト全書5.7.1章・5.7.5章
座学:カスタムViewMatcherの作成 Androidテスト全書5.7.1章・5.7.5章
ハンズオン:RecyclerViewの操作する Androidテスト全書5.7.1章・5.7.5章
座学:画面更新の待ち合わせ Androidテスト全書5.5章
座学&ハンズオン:UI Automatorを使って明示的な待ち合わせ処理を行う Androidテスト全書5.5章
座学:IdlingResource Androidテスト全書5.5章
ハンズオン:IdlingResourceを使ったKotlinコルーチンの待ち合わせ Android Testing Codelab §7kotlinx.coroutines Issue 242
座学:その他の方法でコルーチンの待ち合わせをする 外山のDroidKaigi 2019発表DroidKaigi 2019アプリのCoroutinePlugin.kt

応用編では、受講者が次の2点を習得できるようにカリキュラムを検討しました。

  • ActivityScenarioFragmentScenarioを使ってActivityやFragmentをテストする方法
  • 基礎編で習得したEspresso Test RecorderではカバーできないUIテストを自動化する方法

前者のActivityScenarioFragmentScenarioは、AndroidX Testに新しく導入された、 ActivityやFragment単体をテストできる仕組みです。

特にFragmentScenarioFragment単体を起動してテストできる点が画期的です。 これを使えば特定のFragmentのUIテストを書きたいときの煩雑さが大幅に減りますので、 是非ともカリキュラムに組み込みたいと考えました。

後者は、Espresso Test Recorderを使わずにテストを書く場合に必要なEspresso APIの基本を説明しつつ、 ほとんどのアプリで必要になる次の2点を重点的に学ぶ内容にしました。

  • RecyclerViewの操作方法
  • 画面更新の完了を待ち合わせる方法

特に画面更新の待ち合わせについては、採用が増えてきているKotlinコルーチンを題材としており、 より実践的な内容になっています。

この構成にすることで、2時間という枠の中でEspresso APIの基本を押さえつつ、 Espresso UIテスト実装時に直面しがちな問題への対処法を学べるカリキュラムを実現できました。

ハンズオンの振り返りとその先

ハンズオン実施後に参加者アンケートを取った結果、各ハンズオンの総評は「基礎編」が平均4.8、 「応用編」が平均4.71と良いフィードバックをいただくことができました(5段階評価で5が良い・1が悪い)。

ハンズオンでスキルを身に付けたら次は実践です! 参加者を中心に各プロジェクトが自律的に自動テストを書くようになって、はじめてこの取り組みは成功したと言えます。

SWETでは、これからも各プロジェクトが自律的にテストを書けるようになるための取り組みを継続していきます。

最後に、SWETでは一緒に自動テストの普及に取り組んでくれるエンジニアを募集しています。 今回の取り組みに興味を持たれた方は、下記URLからのご連絡をお待ちしております!

募集職種: SWET (Software Engineer in Test) / テスト自動化エンジニア(Android Test)


  1. ここではアプリのUIを操作が発生するテスト全般のことを指しています。UI操作を伴うものであればend-to-endテストに限りません。

iOSDC Japan 2019でリジェクトリスクを低減する取り組みについて発表しました

SWETの加瀬(@Kesin11)です。

先日開催されたiOSDC 2019にて登壇する機会を頂き、「iOSアプリのリジェクトリスクを早期に発見するための取り組み」という発表をしました。

当日は時間の都合上、紹介したツール(以降、AppChecker)がipaをどのように解析し、どのようにチェックを行っているかというロジックの要点だけの紹介しかできず、コードを示した解説まではできませんでした。

AppCheckerは社内の要件やフローに特化した作りとなっているために、残念ながら今のところOSSにする予定はありません。ですが、自分たちと同様のチェッカーを実装したい方が参考にできるように、どのような実装しているのか簡単なサンプルコードで紹介したいと思います。

実装コードの紹介

以下のコードではipa内のInfo.plistからXcodeとiOS SDKのバージョンのチェックを行っています。

#!/usr/bin/env ruby

# app_checker_light.rb
require 'fastlane_core/ipa_file_analyser'
require 'fastlane_core/ui/ui'

# 各チェッククラスのベースクラス
class Checker
  class << self
    def check(info_plist)
      raise 'Not inplmeneted error'
    end

    # 要求されている下限バージョンの定義
    def config
      {
        'DTXcode' => '10.1.0',
        'DTPlatformVersion' => '12.1.0',
      }
    end
  end
end

# Xcodeの必須バージョンをチェックするクラス
class XcodeVersionChecker < Checker
  class << self
    def check(info_plist)
      version = info_plist['DTXcode'].to_i
      # Xcodeのバージョンが10.1の場合はDTXcode: '1010'となる
      # これをmajor, minor, patchに分解する
      major = (version / 100)
      minor = ((version % 100) / 10)
      patch = (version - (major * 100) - (minor * 10))

      # バージョンとして比較できるようにGem::Versionのインスタンス作成
      actual_version = Gem::Version.create([major, minor, patch].join('.'))
      expect_version = Gem::Version.create(config['DTXcode'])

      if actual_version < expect_version
        FastlaneCore::UI.error("必要なXcodeバージョン: #{expect_version}, 実際のバージョン: #{actual_version}")
      end
    end
  end
end

# iOS SDKの必須バージョンをチェックするクラス
class PlatformVersionChecker < Checker
  class << self
    def check(info_plist)
      version = info_plist['DTPlatformVersion'].to_i

      actual_version = Gem::Version.create(version)
      expect_version = Gem::Version.create(config['DTPlatformVersion'])

      if actual_version < expect_version
        FastlaneCore::UI.error("必要なiOS SDKバージョン: #{expect_version}, 実際のバージョン: #{actual_version}")
      end
    end
  end
end

ipa_path = ARGV[0]
info_plist = FastlaneCore::IpaFileAnalyser.fetch_info_plist_file(ipa_path)

# 新しい種類のCheckerを追加したときはこの配列に追加する
checker_classes = [
  XcodeVersionChecker,
  PlatformVersionChecker
]

# 各クラスのチェックを順番に実行
checker_classes.each { |klass| klass.check(info_plist) }

実行方法

$ bundle exec app_checker_light.rb YOUR_APP.ipa

上記のコードは非常に簡易的なクラス設計となっていますが、実際のAppCheckerは多くのチェック項目を扱え、今後の拡張性を考慮した重厚なクラス設計となっています。

実際のAppCheckerは、このコア部分を呼び出すラッパーとしてThorでコマンドラインから呼び出せるようにした"スタンドアローン版"と、Fastlaneから呼び出せるようにした"Fastlaneプラグイン版"の2種類を提供しています。

Fastlaneのプラグインを作成するのは初めてでしたが、 fastlane new_plugin [plugin_name] というコマンドでひな形となるファイル一式を生成できるため、意外に予想していたよりも簡単でした。もし既に何らかのRubyの便利スクリプトをお持ちであれば、こちらのドキュメントを参考にしてFastlaneプラグインにしてみるのも良いかもしれません。

テスト、CI/CD

AppCheckerは社内の多くのチームのビルドパイプラインに組み込んでもらうことになります。そのため社内ツールといえども非常に高い品質が求められ、それぞれのチェック処理は必ずユニットテストを書きながら開発しました。

さらに、pull-requestによって走るCIではそれらのユニットテストに加えて、Bitriseで実際にサンプルアプリからビルドしたipaに対してAppCheckerを実行してエラーが発生しないことを確認するテストも実行しています。

この確認をする理由は、AppCheckerがxcrunなどXcodeと関係する外部ツールを内部的に使用しているためです。Xcodeのバージョンが上がった際にそれらのツールが期待どおりに動作しなくなる可能性が存在するため、最新のXcode環境を使用できるBitriseを活用して常に最新のXcodeの環境でエラーなく動作することを確認しながら開発しています。

このあたりのAppChecker本体のCI/CDについてはiOSDCでは残念ながら発表時間の都合上お話しできませんでしたが、実はその前の9/3に開催されたBitrise User Group Meetup #2にて発表していました。そのときのスライドはこちらになります。

ガイドラインを追うために

iOSDCの発表中でもお伝えしましたが、App Storeのガイドラインは今後もアップデートされ続けていきます。こちらのAppleのデベロッパー向けニュースは、朝刊を読むのと同じように毎日チェックしましょう。

日本語版は本家の英語よりも数日遅れて発信されるため、できれば英語版のRSSをチームのSlackに流してチーム全員でチェックするのが良いでしょう。

App Store Review Guidelinesのurlはこちらです。

現在のところ1ページに全て収まっています。現行のガイドライン本文を保存しておき、次回の更新時にdiffを取ることでどの部分が更新されたのかハッキリと分かるでしょう。

終わりに

iOSDCで発表したAppCheckerについて補足をさせて頂きました。

当初、SWETで開発がはじまったAppCheckerですが、現在はQAグループ内の自動化を推進しているチームに開発・運用を移管し、アプリがよりリリースしやすい形となるような体制にしています。

SWETではテスト自動化の普及に加え、こうした全社的にコストを下げる仕組みの提案・開発なども行っています。iOSに限らず、複数の技術領域でエンジニアを募集しています。

ご興味を持たれた方はぜひご応募ください。